PSAって何ですか?

前立腺特異抗原(prostate specific antigen:PSA)とは本来は精液のなかに存在する糖タンパクの一種です。 前立腺の構造が何らかの原因によって破壊された場合に、本来は精液のなかにあるPSAが血液のなかに混じり、破壊された状態を推測することができるようになります。

 

前立腺の構造が破壊される原因としては、癌はもちろんのこと、そのほかに炎症、尿道カテーテルによる操作などがあります。 つまり、PSAは前立腺に特異的ではありますが、前立腺癌に特異的ではないことを念頭に入れる必要があります。

 

現在、一般的には癌のスクリーニングとしてPSA採血が行われますが、膀胱炎や前立腺炎などの尿路感染のある方、尿路感染が治癒して間もない方、 尿道カテーテルを留置している方、尿道カテーテルを抜いたばかりの方に前立腺癌のスクリーニングとしてPSAを測定することは、あまり意味のないスクリーニングということになります。

 

 

PSAによる前立腺がん検診は有効か?

最近よく見かける、間寛平さんの前立腺癌早期発見 ブルークローバー・キャンペーンで、年間4300人が前立腺ガンになると言う、、このコマーシャルを見て一度、PSA検診を受けてみようと思った方も多くいるでしょう。

 

いろいろと調べているうちに次のような記事を知ることになりました。
PSA(前立腺特異抗原)は前立腺で作られるタンパク質です。前立腺肥大症や前立腺癌で血中濃度が高くなるので、PSA検査による前立腺癌検診が行われている。 半面、検診で見つかる前立腺癌の多くは進行が遅く、放置しても死に至らないのに、検診をきっかけに、本来は不必要な治療が行われる害も知られている。

 

PSA検診の臨床試験の結果を集計し、効果と害を総合評価した論文が英国医学雑誌に掲載された。
著者らは文献検索で、PSA検診の臨床試験の論文6件を選んだ。
研究対象は米国、カナダ、欧州の計8万7286人だった。

 

前立腺ガンと診断される比率は、検診した群(千人中64人)が、検診をしない比較群(同44人)の1.46倍と余計に上昇し、不要な診断が増えた。
前立腺ガンの死亡率は検診群(同7人)が比較群(同8人)の0.88倍。
この低下は誤差の範囲内だ。すべての死因による総死亡率は検診群(同198人)が比較群(同200人)の0.99倍と差はなかった。

 

著者らは、既存の臨床試験の証拠からは、PSA検査による前立腺ガン検診を一律に用いることは指示されないと結論付けている。 PSA検診の効果と害は世界中で論争がある。今回の結果は今年報告された最新の臨床試験を含む総合評価で、現状で最良の証拠と言える。

 

検診をしない場合に比べ、検診をすると前立腺ガンと診断される確率が高まるが、肝心の前立腺ガンの死亡率や総死亡では、期待される低下があるか明確でないとのデータだ。
PSA検査を受けるかどうか決める際に今回の結果を参考にするのが有用だ。

 

2009年の厚生労働省調査によれば、全国の市町村の64%で、PSA検査による前立腺ガン検診が行われている。
個別には検診に効果ありとするデータもあるが、今回のような総合評価で効果が明確でない以上、公的施策としてPSA検査を実施することは控えることが適切だろう。

 

坪野義隆 東北大学教授(やさしい医学リポート)引用